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Channel: THE KING OF FIGHTERS XIV – WELLPLAYED JOURNAL【ウェルプレイドジャーナル】
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全ての始まりは駄菓子屋にあった筐体から――「KOF」プロ選手・M’が歩んできた道【後編】

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優勝を重ねる彼の練習風景とは

――:大会でのコンディション管理のために、自分のなかでのルーティンのようなものはあるんでしょうか。

M’:
僕は動画をみて相手の事前情報を集めるようにしています。たとえば、大会が始まってトーナメント表が決まると思います。そして、同じブロックのプレイヤーの動画をみて、癖を探しています。
 
 
――:てっきり M’さんは感覚派のイメージが強かったので、研究をしっかりされるのですね。

M’:
基本的には感覚でやる部分もあるのですが、やはり相手の手癖を探したり、研究したりする作業は欠かさないですね。感覚だけでは勝てない部分もあるので。あとは、友達と情報交換をしたりして「この人はこういうネタをもっている」という話を聞いたりしています。
 
 
――:練習についてもお聞きしたいです。今はプロとして活動しながら、普段は会社員として仕事をする兼業という形ですが、練習はどのタイミングで行っていますか。

M’:
基本的には、仕事を終えたあとや、休日などに練習をしています。
 
 
――:練習のやり方としてはどういったものを。

M’:
家では家庭用のネット対戦をしています。あとは練習場に集まって、みんなでオフ対戦を行っています。主な有名メンバーは、SRさん、こうこうさん、あば男さん、ぼんさんらですね。皆で技の相性を調べたり「このタイミングだとこの技に負けるからどうするか」……みたいな細かい部分を、フレーム表とにらめっこして研究しています。
 
 
――:使用キャラクターについても伺えればと思います。「K’」と「庵」を使う理由として、何かこだわりがあるんですか。

M’:
昔から好きなキャラクターですね。いわゆる波動、昇竜コマンドがあって、色々とバランスが取れているキャラクターな部分が好きです。万能キャラクターなので相手の性能に合わせやすくて、そういった理由でも使っています。
 
 

プロゲーマーとしてデビューした2年前を振り返る

――:M’さんはスポンサードの話を実際に受けたのはいつころになるんでしょうか。

M’:
2016年の10月ですね。2年前くらいになります。
 
 
――:きっかけとなったのは、三和電子さんから声を掛けてもらったことですよね。

M’:
三和電子の佐藤さんというKOFプレイヤーの方に誘われて「うちの看板を背負わないか」というお話をしてもらいました。もともと佐藤さんとは知り合いで、同じ「KOF’98 ULTIMATE MATCH」をやっていたのです。そこから話すようになっていきました。
 
 
――:最終的にスポンサードを受けた理由は。

M’:
じつは、2016年前からオファーは来ていたのです。ただ、仕事もやっているし、背負うのはちょっと……という感じだったので、なかなか承諾できない状態がつづいていました。
 
 
――:どちらかというと、プロゲーマーというよりは、趣味の延長という意識でしょうか。

M’:
そうなんですよね。あとは仕事の関係で休みも取りづらくて、イベントに参加するのも難しいという感じでした。結果的に説得されて、仕事に支障をきたさない範囲でゆっくりやってくれればいいということで今に至ります。
 
 
――:実際に2016年にプロとして活動し始めてから、心境の変化はありましたか。

M’:
やはり「頑張らないといけないな」という気持ちは出てきました。大会で結果を残したりしようと思うようにもなりました。もちろん、スポンサードを受けたことによるプレッシャーもありましたね。貢献はしていきたいと思っているので、引きつづき努力はつづけていきます。
 
 

大会で明らかになった海外勢と日本勢の戦略の違い

――:これまでM’さんはかなりの回数優勝されているのですが、そこまでの結果をもたらしている調整の仕方が気になります。とくにメンタル面はどうでしょう。

M’:
とくにメンタルではないかもしれません。でも、海外の大会では緊張は大きいですね。いつも通りできなかったりすることもあります。国内だとそうでもなく、いつも通りの自分で試合に臨めていますね。
 
 
――:「KOF」はアジア勢が強豪ぞろいですが、実際に国よって差はあるのでしょうか。

M’:
ありますね。海外はレアキャラをメインに使用する人が多いです。日本では使用されてないキャラクターを研究して、ネタみたいな感じで使ってきて、そのせいで食われてしまうときも結構あります。一方で日本は偏っていて、強キャラを上から取ればいいという考えがあります。
 
 
――:そんな中で、M’さんは強キャラを使わずに、自分の持ちキャラを使う戦い方ですよね。

M’:
自分に合っているキャラクターを使うのが一番いいかなと思っています。あとは、動かして面白いキャラクターじゃないとモチベーションも保てません。使いたくないキャラクターを使ってもやる気が出ないという部分も大きいです。
 
 
――:大会「KSB」では、M’さんはスコアさんに負けてしまいましたが、その敗因はどこだと考えていますか。

M’:
あれは新キャラの「ナジュド」というキャラクターへの対策のしようがないんです。常にじゃんけんを仕掛ける感じのキャラクターで、明確な対応がまだ見つかっていなかったのが敗因でしたね。
 
 
――:やはり相手にするのが慣れていない、新しいキャラクターを使ってきたのが差になったのでしょうか。

M’:
そうですね。「KSB」のときは出たばっかりで、対策もまだまだでした。しかも、スコアさんは大会までキャラクターを隠していて、いきなり本番で出してきたので。
 
 
――:その他に、これまでの大会で印象的だった試合はありますか。

M’:
「EVO JAPAN」のシャオハイ選手との試合ですね。何回か対戦する機会はあったのですが、負けつづけていて、研究に研究を重ねてリベンジを果たせたので良かったです。シャオハイ選手を倒すのがひとつの目標ではあったので。


 
――:しかし、惜しくも優勝は逃してしまうという結果になってしまいましたが、その理由は。

M’:
その後は、ラウさんという香港の選手に負けてしまいました。周りに「ビリー」を使う人が少なくて、対策のできてないレアキャラにやられてしまいました。
 
 
――:先ほどの海外勢の戦法ですね。

M’:
ラウさん来たらやばいな……とは思っていたのですが、ちょうど上がってきちゃって。ZJZさんという台湾の選手が来たら勝つ自信があったのですが、まさかラウさんの「ビリー」とは。
 
 
――:なぜ海外選手はレアキャラを使うんでしょう。

M’:
やはり一番は大会に勝つためではないでしょうか。そのキャラクターを極めて、周りには強キャラが多いから、自分は対策ができる。でも相手はできないという。
 
 
――:他には海外勢の印象はどういったものがありますか。

M’:
海外勢は音プレイが印象的ですね。操作を読ませないため、音を立ててフェイクボタンをするっていう。
 
 
――:やっぱり手元を見るとかはあるんですね。

M’:
ありますね。韓国勢の一部は仕切りを用意したり、中にはパッドにパーカーを被せたり、いろいろな人がいました。みんな大会を勝つためには手段を選ばないという感じです。
 
 

ライバルはやはり中国最強の“あのプレイヤー”

――:M’さんが現在目標にしているプレイヤーは。

M’:
やはりシャオハイさんですね。彼を超えることが今の目標になっています。本当に大会を勝ち過ぎているので。大体いつもシャオハイさんかETさんが優勝しているイメージですよね。
 
 
――:去年のEVOもETさんが「大門」で優勝でしたよね。

M’:
じつは、その「大門」も周りにはあんまりいないレアキャラなんですよ。あとは「クラーク」とか。投げキャラでジャンケンを仕掛けるキャラなのですが、それをわかって使ってくるあたりも。
 
 
――:では、ライバルとして見ているプレイヤーは。

M’:
それもシャオハイさんですね。どのゲームも化け物のプレイヤーで、目標でありライバルと思っています。
 
 
――:シャオハイさんはなぜここまで強いと言われているんでしょう。

M’:
彼は感覚派なのですが、それですべてを解決してしまうんです。特筆すべき点は反応でしょうか。あの人は本当に反応速度がお化けなんです。
 
 
――:若手で注目しているプレイヤーは居ますか。

M’:
ラギアという20歳の選手がいるのですが、今めっちゃ伸びてきていて、結構対戦とかでもブイブイいわせています。多分ゲーム歴はそこまでではないのですが、めちゃめちゃ天才肌のプレイヤーで急激に伸びてきています。
 
 
――:最後に今後の展望をお聞きしたいです。

M’:
やはり大会で優勝しつづけることですね。あとは、「KOF」に興味がある人に作品を触ってもらえると嬉しいです。新作アプリも登場するということで、そこで「KOF」を知った人にメインのタイトルも触ってもらえればと思います。ガチガチでプレイしなくても楽しめるはずなので。
 


 
プレイヤーとして長く活動してきたM’さんからは、当時のプレイヤーであれば懐かしくなるようなエピソードを多く聞くことができた。そして、当時のゲーセンで打ちのめされて「強くなる」と決意したころから、彼の気持ちは揺らぐことなく現在までつづいている。

長い年月愛されている「KOF」は隆盛と衰退を繰り返し、今再び大きな盛り上がりをみせる時代に来ているといえるだろう。そんな今、人生のほとんどを「KOF」を過ごしてきたM’さんが、さらにどんな活躍を見せてくれるのか。“日本最強”の肩書きをもつ彼は、その期待を大きく上回る結果を見せてくれるに違いない。

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